西田式スピード指数でスピード指数の計算のやり方を理解する
この記事はスピード指数の基本的な考え方の話の続きになります。
別に読まなくても問題ありませんが、以下の内容をより理解するためにも先に読んでおくことをおすすめします。
スピード指数とは各馬のレースの走破タイムを元に、タイムの出方に影響する要素を取り除いた上で、その強さを数値データ化したものであると前回説明しました。
西田式スピード指数では、走破タイムの価値を以下のような計算式であらわします。
(コース基準タイム – 走破タイム)× 距離指数 + 馬場指数 +(斤量 – 55)×2+80
コース基準タイム、距離指数、馬場指数という見慣れない単語がたくさんあって、このままだと何が何だかわからないかと思います。
そこでわかりやすいように、2016年のジャパンカップの結果を例にこの計算式を使ってスピード指数を計算してみたいと思います。
「(コース基準タイム – 走破タイム)× 距離指数」を計算する
2016年ジャパンカップの走破タイムはこのようになります。
着順 |
馬名 |
タイム |
1 |
キタサンブラック |
2:25.8 145.8秒 |
2 |
サウンズオブアース |
146.2秒 |
3 |
シュヴァルグラン |
146.3秒 |
4 |
ゴールドアクター |
146.4秒 |
5 |
リアルスティール |
146.4秒 |
6 |
レインボーライン |
146.4秒 |
7 |
イキートス |
146.4秒 |
8 |
ワンアンドオンリー |
146.6秒 |
9 |
ルージュバック |
146.8秒 |
10 |
ラストインパクト |
146.9秒 |
11 |
トーセンバジル |
146.9秒 |
12 |
ナイトフラワー |
146.9秒 |
13 |
ディーマジェスティ |
147.1秒 |
14 |
イラプト |
147.1秒 |
15 |
ヒットザターゲット |
147.2秒 |
16 |
ビッシュ |
147.2秒 |
17 |
フェイムゲーム |
147.3秒 |
走破タイムは以上のようになりますが、では基準タイムはいったいどのようにして求めるのでしょうか?
西田式スピード指数では、基準タイムを過去に同じコースで開催された古馬500万条件と1000万条件のレースの1~3着までの平均タイム
としています。
古馬500万と1000万のレースを条件としているのは、世代限定戦などのレースに比べてレースのレベルとタイムが安定しているため平均値として使いやすいことが理由として挙げられます。
ジャパンカップの場合、過去に東京競馬場芝2400mで開催された古馬500万条件と1000万条件のレースのタイムを使うことになります。
なお基準タイムのデータは西田式スピード指数の公式サイトで購入(8,640円 ~ )するか、自分で計算をする必要があります。
今回の説明では、わたしが西田式スピード指数のレプリカ(※)を開発した際に作った基準タイムを使用したいと思います。
また以降の説明でも過去のレースから算出した平均タイムをたびたび使うことになりますが、これらも同様にレプリカのタイムであることを了承してください。
(※)あくまでレプリカであるため、本家の基準タイムとは若干の違いはあるかと思います。
2015~2016年に開催された東京芝2400mレースの基準タイムは2分26秒6(146.6秒)になります。
この基準タイムを元に(基準タイム – 走破タイム)を計算すると以下のような結果になります。
馬名 |
タイム差 |
キタサンブラック |
146.6 – 145.8 = 0.8秒 |
サウンズオブアース |
146.6 – 146.2 = 0.4 |
シュヴァルグラン |
146.6 – 146.3 = 0.3 |
ゴールドアクター |
146.6 – 146.4 = 0.2 |
リアルスティール |
146.6 – 146.4 = 0.2 |
レインボーライン |
146.6 – 146.4 = 0.2 |
イキートス |
146.6 – 146.4 = 0.2 |
ワンアンドオンリー |
146.6 – 146.6 = 0.0 |
ルージュバック |
146.6 – 146.8 = -0.2 |
ラストインパクト |
146.6 – 146.9 = -0.3 |
トーセンバジル |
146.6 – 146.9 = -0.3 |
ナイトフラワー |
146.6 – 146.9 = -0.3 |
ディーマジェスティ |
146.6 – 147.1 = -0.5 |
イラプト |
146.6 – 147.1 = -0.5 |
ヒットザターゲット |
146.6 – 147.2 = -0.6 |
ビッシュ |
146.6 – 147.2 = -0.6 |
フェイムゲーム |
146.6 – 147.3 = -0.7 |
以上の計算で各馬の基準タイムと走破タイムの差が分かりました。
次はこの値に距離指数を掛け合わせます。
距離指数は前回の記事でも触れましたが、レースの距離の違いによる0.1秒の価値の差を補正するための係数です。
スピード指数はまったく違うコースや条件で行われたレースの走破タイムを、同じものさしで比較できるようにするものであるため、距離ごとの0.1秒差の価値を’ならす’必要があることからこの補正が行われます。
距離指数は「1÷距離ごとの平均タイム×1000」で求められます。
2015~2016年の芝コースにおける距離指数を一部抜粋すると以下のようになります。
距離 |
計算式 |
指数 |
1000m |
1 ÷ 55.4 × 1000 |
18.1 |
1200m |
1 ÷ 69.1 × 1000 |
14.5 |
1600m |
1 ÷ 94.6 × 1000 |
10.6 |
1800m |
1 ÷ 107.7 × 1000 |
9.3 |
2000m |
1 ÷ 121.2 × 1000 |
8.3 |
2400m |
1 ÷ 147.6 × 1000 |
6.8 |
3000m |
1 ÷ 187.9 × 1000 |
5.3 |
3600m |
1 ÷ 227.4 × 1000 |
4.4 |
東京芝2400mの基準タイムが146.6秒だったのに対して、距離指数で使用している2400mの平均タイムが147.6秒と違うのが気になるかもしれませんが、 これは距離指数で使用している平均タイムはクラスや競馬場の違いを考慮せずに計算した数字であるためです。
距離指数はあくまで距離ごとのおおよその平均タイム比が知りたいだけなので、特にこの方法で問題はないかと思います。
以上の表から芝2400mの距離指数は6.8であることが分かります。
最後に基準タイム差と距離指数を掛けると、各馬の指数値は以下のようになります。
馬名 |
計算式 |
指数 |
キタサンブラック |
0.8 × 6.8 |
+5.4 |
サウンズオブアース |
0.4 × 6.8 |
+2.7 |
シュヴァルグラン |
0.3 × 6.8 |
+2.0 |
ゴールドアクター |
0.2 × 6.8 |
+1.4 |
リアルスティール |
0.2 × 6.8 |
+1.4 |
レインボーライン |
0.2 × 6.8 |
+1.4 |
イキートス |
0.2 × 6.8 |
+1.4 |
ワンアンドオンリー |
0.0 × 6.8 |
0.0 |
ルージュバック |
-0.2 × 6.8 |
-1.4 |
ラストインパクト |
-0.3 × 6.8 |
-2.0 |
トーセンバジル |
-0.3 × 6.8 |
-2.0 |
ナイトフラワー |
-0.3 × 6.8 |
-2.0 |
ディーマジェスティ |
-0.5 × 6.8 |
-3.4 |
イラプト |
-0.5 × 6.8 |
-3.4 |
ヒットザターゲット |
-0.6 × 6.8 |
-4.1 |
ビッシュ |
-0.6 × 6.8 |
-4.1 |
フェイムゲーム |
-0.7 × 6.8 |
-4.8 |
この数値は普通のレベルの馬が同じコースを走った場合(指数=0.0)と比べて、どれだけ優れた走りだったか(プラスのほうが良い)を表しています。
以上が西田式スピード指数の「(コース基準タイム – 走破タイム)× 距離指数」の部分の計算の流れになります。
ここまでの説明だけで面倒に思うかもしれませんが、次の馬場指数の計算さえ分かれば、西田式スピード指数およびスピード指数の基本はほぼ理解できるようになりますので、もう少しお付き合いください。
「馬場指数」を計算する
馬場指数とは馬場状態の良し悪しでタイムの出やすさが変わる点を補正するための指数です。
さきほども述べたように、スピード指数は同じ基準で異なる条件のレースを比較するためにタイムの出方に影響する要素をならします。
馬場状態も同じく’ならし’の対象となるわけです。
西田式スピード指数ではある日のある競馬場の馬場状態がタイムの出やすい状態だったかどうかを、その日に開催された3歳以上、4歳以上条件のレースの1~3着の平均タイムとそのコースの基準タイムの差を参考にして求めます。
もちろんですが芝(※)の馬場指数とダートの馬場指数は別々に計算します。
(※)芝のレースに障害レースは含まれません。
2016年ジャパンカップが開催された日に東京競馬場で開催された3歳以上条件の芝レースはベコニア賞、オリエンタル賞、ウェルカムS、ジャパンカップの4レースになります。
そして各レースのコース基準タイム、上位3着までの平均タイム、「上位平均タイム – 基準タイム」はこのようになります。
コース基準タイム
レース |
コース |
基準タイム |
7R 500万 ベコニア賞 |
1600m |
94.3 |
9R 1000万 オリエンタル賞 |
2000m |
120.6 |
10R 1600万 ウェルカムS |
1800m |
107.7 |
11R G1 ジャパンカップ |
2400m |
146.6 |
上位平均タイム
レース |
上位平均タイム |
7R 500万 ベコニア賞 |
95.8 |
9R 1000万 オリエンタル賞 |
122.7 |
10R 1600万 ウェルカムS |
107.1 |
11R G1 ジャパンカップ |
146.1 |
「上位平均タイム – 基準タイム」
レース |
タイム差 |
7R 500万 ベコニア賞 |
95.8 – 94.3 = 1.5 |
9R 1000万 オリエンタル賞 |
122.7 – 120.6 = 2.1 |
10R 1600万 ウェルカムS |
107.1 – 107.7 = -0.6 |
11R G1 ジャパンカップ |
146.1 – 146.6 = -0.5 |
ちなみに「(コース基準タイム – 走破タイム)× 距離指数」を計算するではタイム差を距離指数によって補正しました。
スピード指数の単位はタイム差を距離指数によって補正した指数であるため、ここでのタイム差も同様に指数化を行う必要があります。
ベコニア賞~ジャパンカップに関する距離指数
距離 |
計算式 |
指数 |
1600m |
1 ÷ 94.6 × 1000 |
10.6 |
1800m |
1 ÷ 107.7 × 1000 |
9.3 |
2000m |
1 ÷ 121.2 × 1000 |
8.3 |
2400m |
1 ÷ 147.6 × 1000 |
6.8 |
タイム差を指数化
レース |
計算式 |
指数 |
7R 500万 ベコニア賞 |
1.5 × 10.6 |
+15.9 |
9R 1000万 オリエンタル賞 |
2.1 × 8.3 |
+17.4 |
10R 1600万 ウェルカムS |
-0.6 × 9.3 |
-5.6 |
11R G1 ジャパンカップ |
-0.5 × 6.8 |
-3.4 |
この結果を素直に受け止めると、7Rのベコニア賞と9Rのオリエンタル賞は上位平均タイムが基準タイムより遅い=走りにくい馬場で、10RのウェルカムSと11Rのジャパンカップは走りやすい馬場だったと読み取れますが、この見方は果たして正しいのでしょうか?
答えは間違いで、このままだと大きな問題が発生します。
基準タイムはあくまで500万条件と1000万条件の平均タイムであるため、それ以上のクラスの強い馬が走るレースの上位平均タイムは基準タイムに比べて基本的に早くなります。
よって、馬場の走りやすさを知るにはクラス差によるタイムの出やすさを考慮しなければいけません。
クラスごとのタイムの出やすさは、ジャパンカップより前に東京競馬場で開催されたレースに対しても、以上の「上位タイム – 基準タイム」の計算を行ったのち、その指数をクラスごとに平均します。
そして「各クラスごとの指数平均 – 1000万条件の指数平均」で出た結果が、クラスごとのタイムの出やすさの補正値となります。
2015~2016年の東京競馬場芝コースにおけるクラスごとのタイムの出やすさ補正値
クラス |
補正値 |
オープン |
+6.3 |
1600万 |
+3.5 |
1000万 |
0.0 |
500万 |
-4.2 |
未勝利 |
-15.4 |
このクラス補正値をジャパンカップ当日の馬場状態に適用することによって、馬場状態の良し悪しを正確に把握することができるようになります。
ではもう一度馬場状態を、今度はクラス補正値ありで計算してみましょう。
レース |
計算式 |
指数 |
7R 500万 ベコニア賞 |
15.9 – 4.2 |
+11.7 |
9R 1000万 オリエンタル賞 |
17.4 + 0.0 |
+17.4 |
10R 1600万 ウェルカムS |
-5.6 + 3.5 |
-2.1 |
11R G1 ジャパンカップ |
-3.4 + 6.3 |
+2.9 |
ジャパンカップは最初の計算では走りやすい馬場と判定されていましたが、オープンクラスは本来基準タイムから6.3ポイント早いタイムが出せるレベルだというクラス補正を行ったことによって、実は走りにくい馬場だったと判明しました。
そしてこのレースごとの馬場の数値を足し合わせてレース数で割った値がある日のある競馬場における馬場状態の良し悪しをあらわす馬場指数になります。
つまりジャパンカップ当日の東京競馬場の馬場指数は(11.7 + 17.4 – 2.1 + 2.9) ÷ 4 = 7.5になります。
馬場指数がプラスの場合馬場状態が悪く走りにくかったという意味で、マイナスの場合は馬場状態が良く走りやすかったということを表します。
2016ジャパンカップ当日の東京の馬場状態の発表は良でしたが、少し雨が降っていたのと秋の東京開催最終日で芝が大分掘り起こされていた点から考えてこの結果は妥当かと思います。
2016年ジャパンカップ出走各馬のスピード指数
ここまでの説明で西田式スピード指数を計算するにあたっての難所はほぼクリアしました。
計算式の中で説明していないのは残るところ(斤量 – 55)×2の部分だけですが、これは出走各馬のレース時の負担重量から55をマイナスして、その値に2をかけるだけです。
これはタイムが同じでも負担重量が重いほうがタイムの価値が高いという補正を意味します。
そして最後の+80は指数の見栄えを調整するためだけの数字ですので、実際のところ50でも100でも構わないといったくらいのものです。
以上で西田式スピード指数の計算式の意味がだいたいは理解できたのではと思います。
最後にこれまでの計算で得た値を元に、2016年ジャパンカップの出走各馬のスピード指数を求めてみましょう。
おさらい:西田式スピード指数計算式
(コース基準タイム – 走破タイム)× 距離指数 + 馬場指数 +(斤量 – 55)×2+80
馬名 |
スピード指数 |
キタサンブラック |
5.4 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 97 |
サウンズオブアース |
2.7 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 94 |
シュヴァルグラン |
2.0 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 94 |
ゴールドアクター |
1.4 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 93 |
リアルスティール |
1.4 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 93 |
レインボーライン |
1.4 + 7.5 + (55 – 55) × 2 + 80 = 91 |
イキートス |
1.4 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 93 |
ワンアンドオンリー |
0.0 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 92 |
ルージュバック |
-1.4 + 7.5 + (55 – 55) × 2 + 80 = 86 |
ラストインパクト |
-2.0 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 90 |
トーセンバジル |
-2.0 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 90 |
ナイトフラワー |
-2.0 + 7.5 + (55 – 55) × 2 + 80 = 86 |
ディーマジェスティ |
-3.4 + 7.5 + (55 – 55) × 2 + 80 = 84 |
イラプト |
-3.4 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 88 |
ヒットザターゲット |
-4.1 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 87 |
ビッシュ |
-4.1 + 7.5 + (53 – 55) × 2 + 80 = 79 |
フェイムゲーム |
-4.8 + 7.5 + (57 – 55) × 2 + 80 = 87 |
本家同様スピード指数を整数にするために、小数点は四捨五入を行っています。
以上、西田式スピード指数を例にスピード指数がどのような流れで計算されるのかを説明しました。
なおここで紹介した計算式は西田式スピード指数初期のバージョンのもので、最新の計算にはペースや脚質などの補正が加わっているようです。
これらの新しい要素を組み込んだ計算式については非公開であるためここでは詳しく紹介できないものの、興味がある方は西田式スピード指数公式(PCサイト)を尋ねてみてください。
基準タイムの販売などもこのサイトでおこなわれています。
スピード指数には西田式スピード指数以外にも、それぞれ独自の計算式で走破タイムに関する理論を発展させたものが世の中に数多く出回っています。
競馬情報サイトなどで〇〇指数というキーワードを目にしたことが一度くらいはあるかと思いますが、その大半はスピード指数ベースのものです。
もしその指数の説明に、「走破タイムを元に~」と書いているようであれば、確実と言ってよいでしょう。
次の記事では数あるスピード指数の中でも、とくに有名なスピード指数をいくつか紹介したいと思います。
またスピード指数は使ってみたいが、「有料なのはちょっと・・・」という人向けに、一応無料で公開されているスピード指数についても触れたいと思います。
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